bahrelghazali そういえば、産経が「慰安婦を理由に、アメリカの日本人児童がいじめられている」という記事に対し、日本の左翼は「そんな話は知らない」という僅かな証言だけを根拠に、いじめは存在しないと断定したっけ。(http://b.hatena.ne.jp/entry/nogawam.blogspot.com/2015/02/blog-post_16.html)このコメントがはらむ誤りは2つあります。秦郁彦氏が言っているのは「見ていない」という証言をいくら集めても「確実な目撃者が二人現れたら」火事は起きたのだと判断して当然だ、ということです。しかし「慰安婦を理由に在米日本人の子供がいじめられている」に関しては「確実な目撃者」あるいは体験者はただの一人も現れていません。いるのは「いじめられたと言ってる人がいる」と言ってる人、だけです。秦氏は「火事が起きたらしいよ」と言っている人を「確実な目撃者」とはみなさないでしょう。当然のことながら。
第二に、秦氏が目黒区で起きた火事や犯罪についての情報をまとめて報告される立場にないのと同じように、産経の記事に登場する第6師団の下士官は師団が関わった虐殺についての情報をまとめて報告されるような立場にはいなかった、という点です。目黒区の消防署が「火事の報告は受けていません」と述べたのであれば、それは普通の区民が「火事は見ていない」と述べるのとは全く違った意味を持ちます。そして右派メディアが言うところの「慰安婦を理由としたいじめ」なるものについては、学校、警察、日本の大使館など(もしそういう事実があるのなら)関連情報が集まってくるはずの機関に問い合わせた人が「そんな報告は受けていない」との返答を得ているのです。グレンデール市でたまたま出くわした市民に「こんな話、知りませんか?」と尋ねて「いや、知らないなぁ」という返事をもらったので「いじめはなかった」と結論付けた、なんて話しではありません。自分が直接に見聞したこと以外には非公式な伝聞等でしか知らない立場の人間と、多数の人間から寄せられる報告を公式に受け取る立場の人間とでは、その証言の扱い方は当然違ってきます。
軍隊においては階級が上になるほど「全体」についてはよく知っているが現場の生の様子は知らないことがある、階級が下になるほどその逆の傾向になる……というのは軍人の証言を聞くときに念頭に置いておくべき基本的な事柄の一つです。